オリジナル作品展2022に投票いただきありがとうございました。

結果発表

投票作品 BEST3

 

第1位

「素肌」​​油画科

 

 

 

第2位

「羨望、思慮」  彫刻科

 

 

 

第3位

「白い壁の向こう側」 日本画科

 

湘南美術学院賞 全3作品

 

尾竹由己代表選出

 

「Tea time」油画科

高度な完成度と、凝ったマチエールが配され、タイトルにマッチした構成力があり、色使いも小洒落ていて素晴らしい作品である。観ていて視線がリズミカルに動き、作品に引き込まれ、背景に流れる音楽すら聞こえて来るような、正に「Tea time」の時間を過ごした。

ポップアートの高名な作家を彷彿させる卓越した作品と言え、今後もこのセンスを生かした展開の作品を、是非多く拝見したいものである。

 

 

 

「繋」デザイン科

繋(つなぐ)と読む。作品を観ていた際は細かい作業の積み重ねをじっくり観てしまっていたが、写真に納めて引きで見ると、球体から溢れるものを受け止めている手が描かれている。敢えて色を使わず、細い線分だけでの表現は、確固たる構成の意思と、緻密に積み重ね上げる繊細な神経を要し、時系列の想像力が駆使されているのが凄い。要所に黒のベタ塗りを配しているのも憎いほど巧みである。

 

 

 

「私の爪日記」デザイン科

遠目には目立たぬ作品であるが、近くでじっくりとコメントを読むと納得するものがあり、この人の1ヶ月の過ごし方が想像出来る。「焼肉行ったら服にニオイがめちゃめちゃついた・・・」のフレーズで「匂い」を爪の上に見事に表現している。描かれている字も巧みで、作品も30個並び、正に1ヶ月である。人と異なる着眼点こそ、デザイナーに求められることであろう。今後も己のセンスの良さを自信持ち、世界に羽ばたいて貰いたい!

 

 

各科統括賞・特別賞

 

学院長賞

「字怪大図鑑」デザイン科

字を書くのではなく字を描く とても発想が豊かで且つ作品としての完成度が高いです。旧字体が複雑な漢字であるからこそ字怪も迫力と存在感があるように描かれ、新字体は可愛らしいキャラクターとして描かれています。また、それらの関係性が面白く、20種のデザインを見飽きません。同時に、簡略化すること、効率化に対してのアンチテーゼを考えさせられもする作品です。作者の着眼とデザインへのこだわりが感じられ、楽しく見られましたし、メッセージに共感できました。素晴らしい作品だと思います。 湘南美術学院 学院長 佐藤武夫

 

 

油画科賞

「いきづかい」油画科

例えば油彩画の出発点である15世紀北⽅ルネッサンスの画家であるヤン・ファン・エイクの作品は、『その技法の原点であり頂点』と評されることがあります。 そこでは彼の超絶技巧からの精緻な描画に焦点が当てられることが多いですが、ある⾒⽅をすれば、その凄みは『油絵具のポテンシャルを最⼤限に引き出している』とも表現できるでしょう。

今回作者が描いたこの作品は、近代以降の画家が時代の流れの中で絵具に託した内容を踏まえつつ、そこに彼⼥⾃⾝の感覚を重ねながら〝油絵具のポテンシャルを巧みに引き出している〟との点で秀逸です。このことは、作者⾃⾝が設定した私⼩説的な場⾯を描きながらもその⼀⽅で、美しくも謎めいた絵具層が饒⾆であることから、⾮常に伝統的な側⾯にも応えられていると評せます。 油画科統括 佐藤友則

 

 

日本画科賞

「透明感」日本画

水色を基調とした色幅の中で小気味良く飛ばした補色が効果的で綺麗で清潔な印象をあたえます。ガラスの透明感と植物や周りの白い縁との対比などもしっかり効いていて制作者の意図がしっかり伝わる作品となっています。 日本画統括 速水駿

 

 

彫刻科賞

「手がかり」彫刻科

彫刻科はこのオリジナル制作展の制作期間に入る前に、静岡にロダンの作品を観に行ったのだが、私も当時、浪人中に美術館でみたロダンなるものに心底感動したのが懐かしい記憶としてある。ここまで人体表現が具体性をもって迫ってくるものかと、ブロンズの黒い塊が、フランス的なブルーズを帯びて立っている姿に、とにかく感動した。普段美術予備校では、もちろん歴史的にすげぇ彫刻を必死に描いたり模刻したりしているのだが、やはり所謂、首像、胸像というものだったり人体表現というものにリアリティが少々なかったわけだが、ロダンの彫刻体験は、すべてを肯定してくれるような優しさもあった。長い手足があって、しっかりと地面に対して踏ん張っている彫刻の姿は、当時10代の私には衝撃的であった。

そして予備校に帰ってきてロダンの記憶が新しいうちに真似をしようと思うわけだが周りを見渡しても彫刻科といえど、ひょろひょろがりがりの友人しかいないではないか。ロダンの作品のように掘りが深く、ムッキムキな人間がいるはずもなく、西洋と日本の風土の違いなんかについて考えたりもした。

 

今回選んだこの作品の作者も少なからず考えたのではないのだろうか。

モデルとなった作者の友人Sくんは、ひょろひょろがりがりで、性格もかなりひょうきんな男で喜んで脱いでくれたわけだが、Sくんの線の細さを逆手にとって、上手く彫刻表現できているのではないだろうか。それはロダン的な重さというよりも軽さの肯定でもあり、猫のようなしなやかさでもある。

ブルーズというよりも、JPOPであり、ポリリズム、いろいろ悩み不器用なリズム感で、なんとか石膏取りも終えることができた。

足の踵が浮いた感じ、前にぐっとでる首つき、なんとなくキザな感じ、など魅力いっぱいな作品である。 彫刻科統括 矢田遊也

 

 

工芸科賞

「はるうさぎ」  工芸科

集積させた花を動物に見立て、よく見るとさまざまな種類や色の花があり、見事に作品として昇華させている素敵な作品です。折り紙という鮮やかな色や清潔感のあるピンとした形は素材の特長がよく活かされ、その花々が寄せ集まってできたフォルムの柔らかさは「はるうさぎ」というタイトルから、さらに想像力を膨らませてくれます。地道な仕事の積み重ねが実を結ぶことの喜びは工芸に限らず、モノづくりの醍醐味です。今後の作品も楽しみにしています。 工芸科統括 石井琢人

 

 

デザイン科賞 芸大系

「みてみて、このまえね、」デザイン科

展示されていたこの作品はそっけないノートだった。期待せずにめくってみると、4月からの出来事が可愛らしいキャラクターと面白く読ませる文章で楽しく綴られており、気づいたら最初から最後まで読んでいた。読み終わった後、今まで当たり前に過ごしていた日常やいつも会う人との会話が少し楽しく思えた。これは作品の力だと思う。デザインをする際に重要なことの1つに記録と記述があるが、鑑賞者に退屈させないためには技術とセンスが要る。この作品からはそれを感じました。 デザイン科統括 大河原健太

 

 

デザイン科賞 私大系

「かいまみる」デザイン科

源氏物語にもある古典的な言葉「垣間見」は、現代にも通用する表現の一つであり、物事を直に見ることを良しとせぬ制約の多かった古の時代の、「ちらと見る」「こっそりとみる」習わしや美意識の面白さを、現代の目線で興味深く捉えたこの作品は、作者の読解と感性を織り交ぜた秀逸なものに仕上がっている。

興味津々な様子を隠し得ない人々の姿をユーモアに表現し、日本的な抑えた配色の中にモダンさを融合させ、小さなコマ割りのような数枚の画面をランダムに配置することによって、まるでそれぞれのシーンを連想させると共に、空間に目を移す行為の中で、映像のカットが切り替わったような「リズム」や「間」の効果を生み出している。人間の欲を滑稽且つ美しく軽やかに表現する様は、作者の観察眼と展開力を感じ、共感性の高い面白い作品となった。 デザイン科  統括補佐 早川 美知留

 

 

建築科賞

「人間確立」先端芸術表現科

architecture アーキテクチャーには建築や構造と、コンピュータシステムの論理的構造などの意味があります。この作品は、まさにコンピューターシステムを駆使し、人体をあらゆる観点で数値化し、人間らしさを確率で表現しています。顔認証がし辛い、マスク着用の現在であるから面白味も増しています。私の数値が71%だった時は、何度も動き、ポーズを変えてモニターに自分を写しました。90%を超えて満足してその場を立ち去る際に、アートとテクニック、つまりarchitecture アーキテクチャーを実感しました。受験生でこのような作品を打ち出してくるとは驚きです。今後の作品制作にも期待します。 建築科統括 佐藤武夫

 

 

先端芸術表現科賞

「居所」先端芸術表現科

作品「居所」はブルーシートや傘、段ボール、コップ、手鏡などの日用品や資材に、一人のオリジナルキャラクターが様々にデフォルメされて描かれている。「居所」の中に登場するキャラクターは、あえて名付けられていない。作者のキャラクターは記号的に、何処にもいないのだ。

 

私たちは、街頭で偶然知人を見かけたとき「〇〇さん?」と名前で確認したりするが、このキャラクターのように名前がなければ、他者を同一存在だと確かめる事はできない。しかし、名前がない故の不確かさを持ちつつも、この「キャラクター」はイメージとして「絵」として唯一、今絶対に「ここ」にいると語ってくる。

キャンバスを飛び出して、ブルーシートや日用品の中にまで顔を出し、そのキャラクターは、私達鑑賞者に対して「ここにいるぞ、ここにもいるぞ」と肉薄してくる。

「ここにいる」という存在感と、「名前のない」という不確かさを作品の中に同居させることで、まさに「居所」とは何かを、多角的に考えさせるのだ。それは、社会の中で進む管理システムの強化や記号的なコミュニケーションから、自身の生んだキャラクターを解放するような姿勢にすらみえる。

 

作品の中央に配置されたキャラクターの描かれたブルーシートの余白には、QRコードが数十にも記してあり、端末からアクセスすると展示会場外近辺から東京都心にかけてのマップ内に、その目前にある作品(オブジェクト達)が、過去に路上などに設置されていた事実と、その状況を把握出来る写真が現れる。会場にいながら、意識の中でそこにあるオブジェクトがそのものだけではないと認識しつつ、それに反しブルーシートの支持体に描かれたキャラクターは探してもネット上に出てはこない。この場でしか出会えないリアリティが、展示会場内を恰も、ストリートや高架下に瞬間移動させたかのような錯覚へと誘なう。作品「居所」は、幾つもの作者の意図的な要素がレイヤーとして絶妙に交錯し、彼女自身を取り巻く現代社会をひたむきに描いている。 先端芸術表現科 村上聡・海野林太郎

 

 

受験デッサン科賞

「無縁」彫刻科

●様々な表現形式、趣味性(手段や方法・スタイル)を自由に選択できる今時代にあって、日頃の制作の延長線上にある行為(伝統的な、古典的な行為)からむしろ「オリジナルなってなんだろう」という「問い」を立てるような、まっすぐな態度や姿勢を貴重にも、また新鮮にも思いもしていました。

●実材を扱った制作行為には、各々にその扱いに固有の「技術」(準備、道具、設備、工程、知恵)がともなってくるかと思います。専門の就学の手前での試みという点で、(「石器時代」に戻ったような??)どうやるんだろうか(どうなるんだろうか)という戸惑いと、体が感知する注意力や緊張など手探りで難儀な進みゆきでもあったのではないでしょうか。それでも、ワクワクするような初めて出会う感触や驚き、錯誤し工夫する愉しみ(喜び、気づき)もまたあったのではないかと想像します。

● ‘守’ の季節をまっすぐに、少し先の次のステージでは、そこから新しい「問い」を見つけて行ってほしいなあと願っています。 受験デッサン科統括 湯浅一央

 

 

通信教育科賞

「旅路」先端芸術表現科

あまりにも断片的で、情景と接続しきれないイメージを貫通する謎のヒモ。ここにはない別のイメージとも繋がっているかもしれない/もしくは何処とも繋がってないのかもしれないそんな不思議な空気を醸し出す作品。記号的なイメージの繋ぎ方や突き放し方、断片的なものを断片的なまま扱える感覚など、おもしろい個性を持った作品だなと思いました。 通信教育科統括 遠藤惇也

 

 

美大学科賞

「架空芸人単独公演」デザイン科

タイトルの通り、芸人コンビ名・公演内容などすべて架空で、最初は告知ポスターのヴィジュアルやタイトルロゴ、舞台模型など、目につきやすい部分のクオリティーが高いことで興味をもったのですが、展示資料を読み込むと、芸人コンビの名前や経歴、出演番組などの背景情報、公演においてもタイトルだけでなく、各演目名やあらすじ、舞台演出など、細部の細部まで設定をしっかりと練り込んでいることに感心し、好きなことをトコトンやりきる、作者のスピリットにとても好感をもちました。

平面から立体、コンセプトまで、トータルデザインとしての仕事の質も素晴らしいと思いましたが、徹底的に作り込まれた世界観から、架空ということを忘れ、あたかも実在するのでは?と感じさせる説得力をもった作品だと思います。 美大学科統括 嘉部隼人

 

 

基礎科賞

「興味」デザイン科

「興味」というタイトル通り、普段何気なく視線を落とした先の道路をモチーフにオノマトペをきっかけにさまざまな質感が表現されている作品です。「興味」の向かう先、きっかけはささやかなことかもしれませんが、それぞれを表現するための素材へのアプローチ、試行錯誤の跡を感じました。あと、普段は見下ろしている道路が壁面に立ち上がる視点の変換にもおもしろみがあります。

これからも「興味」が持てるものを大事にしながら制作に取り組んでいってください。おめでとうございます。 基礎科統括 石井太介

 

 

ジュニア科賞

「月虹」工芸科

一眼見た感想と、作者の説明が一致し、嬉しくなりました。鑑賞者側の視点と作者の視点が作品のように鏡写しになって、作品を通して対話できたようです。作品の完成度もさることながら、そういった制作姿勢までも効果的な作品だと思います。 ジュニア科統括 飯田安奈

 

 

 

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